創作文章 獏の骨 

散文、詩、日常独白雑想

【散文詩】僕はもう、世の中の偉い人や賢い人をやたらめったら褒めたりしない

 

 


人にどれだけ影響を与えられたかがその人の資質だみたいな話を僕は昔から散々聞かされてきたよ、引っ込み思案だったからね、君はそのままじゃ人に感知してもらえない名無しのままだよってね、その時の僕はまだ幼くて、大きなお世話だって怒鳴ってやる事すら考えつかずに静かに頷いていた、時々思うんだけども思考回路が人間や人間社会に対して向いている人と、気持ちが自然とか言葉の無い物事に向かっている人がいるよね、第一に世の中の人に認識されていることがその人の資質だとしたらさ、大量殺人犯なんて『すごい人』ってことになるじゃない?僕は世の中の偉い人の名前なんか知らないけどあのアニメ会社を業火で包んだ奴や宗教テロをしようとした奴の顔や名前はすぐ出てくるよ、とんでもないサイコパスな連続殺人をする奴なんかも何故だかすぐ覚えちゃう、でもそれ以外の有名人なんて興味も湧かないんだ、あのね、帰り道に河原を見たら薄汚れたオッサンが酒飲んだりパン食べたり、要するにそこで好き勝手にやっててさ、なんとなく哀れさを感じていたら、そのオッサン、パンの袋やらカップ酒の小瓶やらをまとめた袋をいきなり川に投げ捨てたんだよね、彼は世の中の誰にも知られていないからこういうことが出来るし、世の中の誰にも知られていないから悲しいんだろうか?この川に直接の恨みがあるっていう風でも無かったからおそらく人間社会に対して漠然と感じているわだかまりを、そこに投げつけたんだと僕は解釈した、それは川の真ん中あたりをぷかぷか浮いていたよ、こういうものを見ると僕は次から、もう世の中の偉い人や賢い人をやたらめったら褒めたりしないようにしようと思うんだ、だって僕は悪人よりも善人に痛めつけられることが多かったから、出来ない事を諭されたり出来るようにって無理にこなせるようにさせられたり…もっともこの件に関しては果てしなくて、上には上がいるわけだから君はまだ途上だって言われたりするのがきつくてさ、ここで言う上、に向かってあのオッサンはゴミを投げ捨てたんだろうか?出来損ないを責めちゃいけないよ、あくまでも人間社会に視点を合わせた場合、上には上が居て下には下が居るんだ、別に馬鹿を甘やかすつもりはないよ、天才の資質っていうのは人類の資質なんだと僕は思っているんだ、取るに足らない事をしてしまう馬鹿な奴もまた人類の一部分だ、出来る人と出来ない人に関しては個別化する必要なんて感じなくなったよ、人間社会の視点の唯一の盲点は個人を特別視しすぎているって事だよ、個々人を特別視すればするほどそうでない奴らが嘆くんだ、僕はそこまで人間社会に価値焦点を合わせ続けなきゃいけないとも思わないから、これについて嘆くというのが本当は滑稽だと感じているよ…けどまあ僕の話をこうして聞いてくれる人が僅かながらでも居て、さらに僕の口を借りてあのオッサンはみんなに残像を与えてゆくって事を考えれば、人間社会的な視点で見てもあのオッサンも実は結構、人に影響を与えるタイプなんじゃないのかなあなんて、思ったりしてるよ。